
| 古沢 俊美 | ||
| モダンダンス修業中に、土方巽の初期の舞台、「トマト」(1966年)にも参加して後に舞踏に転身して、キャリアを重ねてきた五井輝は生地・北海道の、麓を石狩川が流れる「音江山」のタイトルで久しぶりに中身の濃い舞台を披露した(11月13日・テルプシコール)。少年時代に刻印された家の象徴としての畳を装置として使い分け、村の老婆と痴呆でイノセントな少女らの、聖なる存在の変幻自在な変身など、何景も衣装を替えての矢継ぎ早の場面転換は息もつかせなかった。なかでも「ブルージンと皮ジャンパー」の曲をバックに大きな鯉のぼりを腹裂きにして拡げブリッジの姿勢で頭に被り、下半身は剥き出しに曝す少年時の記憶。 |
背景の女の着物が見つめる中、赤銅色の銅板(美術:ボンズ赤川)を叩き出した馬の頭を被り、傷痍軍人さながら松葉杖を脇の下に抱えて、男の愚かな戦争を執拗に踊りきり、死んでいく馬に少年の悲哀も重ねる。 極北の地、シベリア帰りの叔父の眼光の鋭さを、溶接した鉄筋を覆うアカの格子に幽閉された斉藤徹のウッドベースの重低音が一層、際だたせる。照明(杉浦弘行)も一段と冴えてメリハリの効いた場面を演出する。背中一面に彫り込んだ本物の刺青を見せ、鍛えられた筋肉が血の赤、雪の白を対比させて彩色した畳を持ち上げると、五井輝の面目も躍如として、観客も圧倒されっぱなし。上手前の大きな桶からガバッーと彩り鮮やかな花束が水を滴らせながら上空に揚がるとフィナーレ、レクイエム。対角線に長く敷かれた畳の道が北海道の広野を想わせ溶暗に沈んでいく。 |
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| 【36th舞踊批評家協会賞】 | |
| 五 井 輝 【授賞理由】舞踏と自身の、DNAと風景がぶ厚く重なっ て、舞踏史に新たな展望をもたらした舞台の成果に対して。 |
![]() 「音江山」五井 輝photo:古沢俊美 |
![]() 「音江山」五井 輝photo:古沢俊美 |
